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歴史

小紋とは、型染染色の一つで、文様が細密なことから大紋・中紋に対して生まれた名称です。小紋の起こりは室町時代の表襖にまで遡りますが、一般に広く小紋が染められるようになったのは江戸時代に入ってからのことです。
熊谷染(小紋)の先駆者は、権田治三郎であり、江戸で修業し、江戸小紋の流れを汲むものです。明治20年頃に「型治」という屋号で熊谷に開業し、明治23年、現在の宮町に工場を建設しました。
明治20年頃には、清水武平次が染色工場を設置し、近藤栄次郎が緋染屋を開業しています。大正末期に糊に染料を入れた型付け技術が発明されると、それ以前の引き染に替わって、しごき染の手法が導入されました。

製作工程

小紋の製作工程は、糊と染料を混ぜ、これをヘラで型紙の上から塗って生地に柄を付ける染色技法で、染色技法でいう捺染のことです。
@糊つくり:捺染用(なっせんよう)の糊は、もち米と米ぬかを混ぜて作り、型付けをする柄や地色によって配合を変えます。もち米を粉末状にして米ぬかと混ぜて塩を少量加え、お湯を注ぎ練って団子状にして蒸します。それをお湯で伸ばしながら練って作ります。

防染糊

A地張り:生糊が敷いてある長板に霧を吹いて濡らし、ハケで水分をムラなく伸ばします。その後、長さ12mの白生地を、布目が曲がらないように張ります。糊が乾かないうちに素早く、布目が曲がらないように張るので、スピードと正確さが要求されます。

地張り

B型付け:事前に水につけ、水を切った型紙を、地張りした生地にあて、1で作った糊を付けていきます。この糊をつけたところが最終的に染まらず白く残り、柄となります。そのためこの工程が熊谷染の工程の中でも最も技術が必要とされます。

型付け

C地糊つくり:生地を染める地糊をつくります。1で作った糊に染料を加えて色糊を作ります。お湯で伸ばしながら地糊の粘りを調整します。調整がうまくいかないと、生地に色が入っていかないので、職人の勘が重要です。

地糊作り

Dしごき:型付けの終わった生地に、4の地糊を付けていきます。シゴキベラでムラのでないように、縦にしごいてから横にしごきます。何度も生地の上をこすることで、仕上がりに風合いがでます。その後、生地と生地がくっつかないように、オガクズを撒きます。

しごき

E蒸し:しごいた生地を、木の棒に吊るして蒸し箱に入れます。余分なオガクズを払いながら、また生地と生地の間隔をあけて蒸気が対流するようにしながら、蒸します。正絹の場合は高温だと柄が流れ、低温だと発色が悪く、熟練の技術がいる作業です。

蒸し

F水洗い:蒸しが終わると、水で余分な糊をきれいに洗い落します。流れの速いきれいな水で洗うのが最良で、熊谷市内では昭和30年頃まで星川で洗ったりしていました。俗にいう「友禅流し」です。近年は水槽で機械を用いて洗います。

水洗

G脱水・乾燥:水洗いした生地を脱水します。脱水機で水を十分に切ったら、生地を乾燥させます。できるだけ短時間で発色を鮮明にするように気をつけます。長時間乾燥すると、柄がにじむことがあります。屋外で乾かすこともあり、屋外に欄間がある工場もありました。

脱水 乾燥

H仕上げ:染め上がった生地に出ている染めムラや色落ちを、小筆やハケで丹念に修正します。「地直し」という作業です。染料を水で溶いたものを、生地の上で掃くように塗ります。素人には修正した箇所がわからないほどのワザの作業です。

仕上整理