梶塚興元（かじづかおきもと）（1815-1866）
江戸時代末の漢方医。興元は、文化12年（1815）、熊谷在住の医家梶塚興基（1788-1852）の次男として生まれました。字は士善・居中で、玄節・星溪・搆菴と号しました。母方の祖父は熊谷の医家三浦無窮（1737－1816）、妻は熊谷本陣竹井家11世信静の子です。
興元は、14歳の時、江戸に入り、昌平坂学問所に入学し、安積良斎（1791-1861）に朱子学を、多紀元堅（1795-1857）に医術を学びました。その後、江戸幕府の医療教育機関である医学館（後の奥医師医学館）において講書（教師）として、講義や書物を作成しました。やがて熊谷に戻り、子弟にその成果を教えますが、弟の興美に家を譲り、園部藩の医員縣（あがた）氏の後を継ぎ侍医となり、20年余仕えました。
興元は生涯を通じて華美なものを好まず、ひたすら読書に没頭していました。晩年、病床にあっても子弟への講義を続け、亡くなる当日も古代中国の医学書『黄帝八十一難経』を講義し、直後に息を引き取ったと伝えられています。
現在、興元の墓は、市内大原熊谷寺墓地の竹井家分家墓地の一角に立てられています。墓石表には「医學講書星溪縣翁墓」、両側面と裏面には興元の業績が、流麗な曹全碑風隷書体で刻まれています。
撰文は海元起、書は、江戸時代の書家の関家五世関思敬（1827-1877：号は雪江）、石工は、江戸谷中の９代続いた名石工廣群鶴です。
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| 梶塚興元墓「医学講書星溪翁墓」 |
参考文献
- 1982『熊谷人物事典』日下部朝一郎
- 2025『医學講書星溪縣翁ノート』西條 誠