常設展示室/寺内古代寺院跡の部屋

出土遺物


 瓦は、軒丸瓦・軒平瓦・丸瓦・平瓦が金堂・講堂・塔跡から出土しています。時期的には、奈良時代の後半から平安時代の後半までの期間に比定されます。
軒丸瓦は、素弁八葉蓮華文と単弁四葉蓮華文の二種類が確認されています。軒平瓦も、偏行唐草紋と連弧文の二種類が確認されています。基壇建物全体を瓦が覆っていたとすると出土量が圧倒的に少ないことから、瓦は、屋根の部分的に葺かれていたことが推定されます。
 平瓦には、凹面に文字が刻まれているものが確認されており、「市田郷瓦大里」「大里郡□」「大」「山」などの文字瓦や、印刻で「豊」などのような武蔵国分寺創建期に見られる瓦も確認されています。
 また、近年、玉川村亀ノ原窯跡群より、素弁八葉蓮華文軒丸瓦と同文の瓦が出土しており、寺内古代寺院の瓦が焼かれた場所の一つが特定されています。
軒丸瓦   亀ノ原窯跡群第4次調査出土軒丸瓦  
軒平瓦   瓦塔  
文字瓦   文字瓦(部分)  


塑像(そぞう)
→塑像
 塑像は、頭部・ 体 ・裳部など多数の断片となって出土しており、本来の全体像を知ることは難しい状況です。
頭部の破片は、小像の顔面部・螺髪(らほつ)・耳・鼻などです。小像の顔面部は、10cm程残存しているもので、木芯に荒土をつけ仏像の素形を作り、この上に上質の粘土を被せて細部の形を整え、仕上げに漆喰を上塗りし、色を付けています。両目を見開き鼻梁をきわだたせ、頬の張りも強い、威圧的な表情をしています。
体?・裳部は、丸み・刺突文・稜線・沈線などで表現され、肩・胸・肘などを表現していると推定されます。中でも最も大型の破片は、三本爪の表現のある右足です。奇怪な表現であるため、仏ではなく、邪鬼などが表現されたものと推定されます。

塑像頭部   螺髪   塑像足  


鉄製品
 鉄釘は、建物の建築部材として使用されたもので、約500本が出土しています。大型の釘は、21cm程で、方頭または鋲頭をしています。中型の釘は、15cm程で出土釘の大多数を占めます。垂木を打ちつけた可能性が考えられます。小型の釘は、6cm程で、主に金堂から出土しています。
この他、講堂跡からは、出入り口の扉を飾った金具と考えられる傘状の鋲頭釘も出土しています。
また、扉金具と推定される方窓を開けた「金壺」や、風鐸(ふうたく)を釣下げたと推定される「釣金具」、カギ状の金具などが出土しています。
飾釘  
金具  


銅製品
 講堂跡より、「八花鏡」「銅鈴」が出土しています。「八花鏡」は、破損後に被熱により歪んでいますが、直径12cm程で、背面の図像は、花弁の八区に花虫を配し、内区に鈕を挟んで獅子に乗る仙人二人と鶴に乗る仙人二人を対象に配置しています。
 この他、製品ではありませんが、銅滓が東院集落内の土壙より出土しています。
 
 


墨書土器
 墨書土器は、8世紀半ばから10世紀半ばまでの時期に属し、寺の名称や、出土地の性格を示すものが多く出土しています。「花寺」「石井寺」「寺」「東院」「上院」「兼」「多」「千油」などがあり、主に、須恵器・土師器の体部および底部に記されています。
 「花寺」「石井寺」は、寺内古代寺院を呼称する名称、「東院」「上院」は施設の名称、「多」「千油」「兼」は使用目的・所有形態を示しているものと推定できます。
墨書土器  

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