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熊谷市指定有形文化財 彫刻
「正福寺の額」
正福寺の額の写真
「三十四所 第二十二 沼黒 正福寺
のりのみち むすぶえにしは あさくとも もらさぬちかい ふかきぬまぐろ」
所在地 沼黒779
所有者(管理者) 正福寺
時代:江戸後期
御詠歌が刻まれた二つの額 ―巡礼の旅の歴史―
 熊谷市指定有形文化財(彫刻)の「正福寺の額」と「金蔵寺の額」は、大里地域に所在する正福寺(沼黒)と金蔵寺(中恩田)において保管されている木製の額です。この二つの寺は江戸初期に開基し、吉見郡今泉村(現、吉見町)にある金剛院の末寺でした。額の冒頭には札所や霊場めぐりの寺となっていたことが示され、額の全体に、短歌として表現された御詠歌が刻み込まれています。正福寺の額には「三十四所 第二十二 沼黒 正福寺 のりのみち むすぶえにしは あさくとも もらさぬちかい ふかきぬまぐろ」、金蔵寺の額には「三十四所 第二十三 恩田 船松山 金蔵寺 春秋の ときおもわかす かのきしべ わたすちかいの のりのふなまつ」と刻まれています。仏道の教えや供養が込められた詩歌は、旅人や参拝者によって音の旋律が加えられ、情緒的に唱えられていたことが想像できます。
 なお、額に示される三十四か所の札所についての記録は現在残されていませんが、御詠歌の文字は巡礼する人々の心に深く刻まれ、次なる旅に向けての勇気を与えていたことでしょう。二つの額は、巡礼の旅を示す証であると共に、当時の民衆信仰を示す貴重な資料であると言えます。
指定年月日 昭和54年5月14日