イベント・テーマ名 「わがまち熊谷遺跡めぐり」
テーマ展-円山遺跡-
実施日 平成21年7月21日(火)~11月25日(水)実施日を延長しました
「有」
『一遍上人絵伝』 国宝  歓喜光寺・東京国立博物館蔵
―京極四条釈迦堂 弘安7年4月16日 一遍釈迦堂で念仏を勧める―

京の都、四条大路と東京極大路の交差する場所にあった釈迦堂に、一遍が逗留し踊念仏を興行した。貴賎を交えた都人が堂の内外に参集し、周辺は、大変な雑踏になった。上図はこの群集の一場面で主人を待つ馬同士がいさかいを始めたところである。あごひげを生やしたしゃくれた顔の男は暴れる白馬の御者であろう。この男は「三鱗」文の着物を着ており、執権北条氏の家中の者らしい。彼は左方のむちを持った男に声を掛けているようにみえる。白馬は身分の高い武士の乗馬で、その尻にある馬印は、威信を示すというステイタスシンボルであったろう。

暴れる白馬の左尻に「有」文字が大書されています。本絵巻では唯一烙印と推定される文字が書かれている馬図の例です。本例は馬印としてこの乗馬の主が誰であるのか示しているのでしょう。しかし、古代の令では馬は左尻に刻印する規定であることに外れています。また、文字の形は大きく見え、烙印であるのか不明です。しかし、本例は鎌倉時代末ころの民衆生活の様子を生き生きと描いており、絵師も現地に赴いたとされ、推測の部分は少ないと考えられています。
円山遺跡の烙印の文字と奇しくも一致しますが、時代が数百年離れていることから、関係する可能性はほとんどありません。この文字についての研究は今後の課題となっています。

(執筆文責 熊谷市立江南文化財センター 新井)

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