歓喜院聖天堂にはどのような有形文化財がありますか?

回答します

 長い歴史と共にある歓喜院聖天堂は、本殿や貴惣門などの建造物のほか、それぞれの時代にゆかりのある貴重な有形文化財(工芸品・書跡)を有しています。その筆頭に挙げられるのは、国指定重要文化財(工芸品)の「御正躰錫杖頭(みしょうたいしゃくじょうとう)」です。これは、寺伝によると、建久8年(1197)に、斎藤別当実盛の外甥の宮道国平が実盛の二人の孫と共に寄進した聖天堂の御本尊であり、秘仏とされています。県指定有形文化財(工芸品)の「紵絲斗帳(ちょしとちょう)」と「鰐口(わにぐち)」は、美術品としてだけでなく、歴史的にも貴重な資料です。「紵絲斗帳」は、銘文によると中国の嘉靖(かせい)年間(1522〜1566)に作られた織物で、二代目忍城主の成田長泰(なりたながやす)が奉納した品です。濃い藍色の布地に紅色で鳥や雲の模様を織ったものであり、時代を経て紅色は褐色に変化しましたが、味わい深い風合となっています。なお、荻生徂徠の『度量衡考』にも紹介されるなど、古くから多くの関心を集めています。
 「鰐口」は、寺院や社殿の軒先につるし、布縄を振って打ち鳴らす鋳銅製の仏具であり、暦応2年(1339)の南北朝時代に奉献されたものです。鰐口の内側に陰刻された「武州福河庄聖天堂常住也」という銘は、室町時代初期の妻沼地域が「福河庄(ふくかわしょう)」と称されていたことを示しており、当時の行政的な位置付けを知ることができます。
 その他に、歓喜院が所蔵している市指定文化財(書跡)の「妻沼八景の詩画幅」(豊洲・寺門静軒筆)と「勝海舟の書」は、共に歓喜院と当時の文化人とのつながりの深さを示す名品です。