歓喜院聖天堂の彫刻「三聖吸酸」とはどのようなものですか?

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 聖天堂の奥殿の南側上部、唐破風の下には、三人の聖人が一つの瓶を囲んでいる彫刻があります。これは、孔子、釈迦、老子が酢をなめて、その酸っぱさを共感している様子を表現したものであり、「三聖吸酸」という中国の故事に由来しています。つまり、酢が酸っぱいという事実は皆同じであり、儒教、仏教、道教など、宗教や思想が異なっているとしても、真理は一つであるという「三教一致」を意味しています。この故事のオリジナルは、儒教の蘇軾(そしょく)と道教の黄庭堅(こうていけん)という二人の書家が、仏教の仏印禅師(ふついんぜんじ)のもとを訪れた際に、桃花酸という酢をなめ、三人が共に顔をしかめたという逸話に基づいています。
 「三聖吸酸」は、寺社建築や屏風絵などの題材として使用されることがあり、日光東照宮における陽明門の彫刻や、海北友松の『寒山拾得・三酸図屏風』(重要文化財)などにおいても見ることができます。
 聖天堂における三聖吸酸の彫刻では、三聖人が前方を向き、共に人差し指を立てながら、酸っぱさを確認するように口を小さく開けています。その表情はとても温和であり、親しみを感じることができます。
 また、彩色に目を向けると、孔子の服装や中央の瓶、植物の彫刻などに使われている緑色は孔雀石を原料としており、その色合いからはとても落ち着いた雰囲気が醸し出されています。これらの表情や彩色は、漆塗りされた周囲の木枠の中心に浮き上がり、独特の空間を作り上げています。まさしく、だれが目にしても「美しい」という事実がそこに存在していることが分かります。


三聖吸酸