柿原一路（かきはらいちろ）（1888-1962）

俳人。本名清二。石原村（現熊谷市石原）に生まれ、九州大学工学部を卒業する。大正4年農商務省技手として任官、その後工手学校教授を勤め、大正8年頃より俳句をつくり始め、大正9年紅暁吟社の同人として活躍する。国民新聞、日日新聞、ホトトギスへ投稿する。大正10年には「定斎屋汗を流して通りけり」（『ホトトギス』第24巻第12号：ホトトギス社）が初入選している。（＊定斎屋：じょさいや：夏に町中を売り歩く、暑さよけの薬の行商人。）

大正11年帰京し、絹物問屋の柿原商店の若主人として事業に励んだ。柿原商店の店員、岡野孤童も一路の感化を受け、作句に励み、国民新聞俳壇に一路と共に名を連ねた。大正15年には、熊谷俳壇の団結のため、各結社をまとめ「泉吟社」を結成した。

昭和5年泉吟社では、俳誌『コスモス』を創刊し、雑詠選を一路が担当した。大正6年には『コスモス』を発展的に解消し、一宿、露文らとはかり、俳誌『凌霄花』として刊行し、全国的な俳誌として会員多数の投句者を得た。　昭和2年熊谷市文化功労者として表彰される。

この他、埼玉夏草会会長、県俳連参与の要職を歴任し、地方俳壇の興隆に尽力した。昭和37年73歳で没す。

昭和38年自宅内庭へ「清閑の硯を洗ふ一事かな」の句碑が造立されている。